君と一緒なら









この道を、歩くと決めた時から。


この時を、お前と共に歩んでゆくと覚悟したその瞬間から。



心の奥に、巣食う様に、広がった想いが
君と心を通わせてゆく事で、溢れ出す。









始まりの始まり







「……セイン、ケント。 お前達に、全てを任せたぞ」



「は」
二人して、初めてと言っても過言ではない、重大な任務。
失敗すれば、それが死に直結している事も分かっていた。



だから、お互いに誓い合って、しばし故郷を離れていく。
キアランが自分達の目に見えなくなるまで、ずっとお前が遠く、向こうを見ていた事。

……お前が、どれだけあの故郷を大事にしているか。
…主君である、ハウゼン様を大事に思っているか。


お前のその様子だけで、痛い程に、分かった。








「……いつ、帰ってこれるかねぇ」

「…今からそんな事を言っていてどうする」

「だって………」



サカ族男性と駆け落ちしたという、マデリン様。
今、何処で生きているのかも全く分からない。
家族だって……それに近い。

けれど……唯一の手掛かりは、彼女が遊牧民族の者と共に駆け落ちしたという事。
だから、居るとすれば…サカの草原。


俺達の居たキアランからは、馬でも数日は軽く掛る道のりだった。





「……元々、彼等を探す事自体がほぼ不可能に近い事なのだ」


………そう。  見つかって当たり前じゃない。

見つからなくて当たり前。  そう言うべきだった。



「大体、サカは広いからなぁ」
地図を広げても、そのほとんどは草原のみ。

だからこそ……民族が数多く部族となって暮らしているのだが。


「……確か、ハウゼン様の言葉では娘のリンディス様が居ると……」
「あれ、そうだったっけ?」
「……しっかり話を聞いておけ馬鹿者」
「綺麗な娘さんだといいねぇ、その……リンディス様」

「…当たり前だが、手出しをしようものならすぐに私が斬るからな」
「……分かってるよ」
ケントじゃ、洒落で済まされない。
それは俺だって、幾らなんでも分かってる。
その、冷たい眼光が。


―――いつからだったろう、お前に惚れちまったのは。



その鋭い眼差しに。
明るい橙の、お前らしい髪に。
赤い、紅い、そして堅い、性格そのままの様な鎧に。




……この任務が終わったら、早いうちにこの気持ちを伝えようかと思ってた。

でも、そんなに待つ事は、俺には出来なかった。
お前の事で、頭が破裂する前に。


別に、躊躇ってた訳じゃない。
お前が、拒絶するであろう事も、全て承知の上。

けれど……伝えて、それで思い切りふられるなら、それでも………構わない。

お前に、この気持ちが伝われば、それで構わないのだから。













その日は、あっという間に三分の一も進む事が出来ずに、夜を迎えてしまった。
この日は近くに町があったからいいものの。

これから先は、あまり町という町がある訳では無い。

いつ、宿がなくて野宿になってもおかしくはなかった。
いつも、キアラン城の傍にある宿舎で寝ていた俺達にとっては、まだ未経験である事なのだが。




とりあえずは、ケントが手早く宿をとり、疲れた体を癒す事にした。
宿の中は、落ち着いていてゆったりとした広さで、まぁベッドが一つしかなかったのは我慢する事にしたのだった。


「……ふう、今日はもう、疲れたな…」
「そうだな……」
「ケントさん?駄目だよ、まだ着替えてすらいないでしょ―」
「………」

「ケント?」

気が付けば、既にケントはベッドの上で寝息を立てている。
流石に、此処までの道のりは長かったから。
思わず笑いながらも、そっと毛布を掛けてやった。




明日も、また頑張らなくては。

お前も、俺も。
大丈夫、俺達はお互いに、支え合っていくのだから。

そう………絶対に、大丈夫。






セインはそっと、眠るケントの頬にキスをして、ぎゅっと手を自分の胸に当てた。












―――それが、俺達の想いと、出会いの始まり、だった。










つづく




セイケン連載やってみる事にしましたー!
どのくらい長くなるかはまだ未定なのですが、ちょくちょく手直ししていくと思います(汗。
……とりあえず、甘めの話になっていけたらと思います♪

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